はじめに
「もう会社を辞めてフリーランスエンジニアになろうかな」
そう思ったときこそ、一度立ち止まって考えてみてください。
フリーランスエンジニアは、働く時間や場所を自由に選べる魅力があります。スキルさえあれば、収入も自由度も上げられる働き方です。
しかしその自由の裏には、会社員時代には見えなかったリスクや責任が隠れています。
この記事では、これからフリーランスを目指すエンジニアに向けて、独立前に知っておきたい5つのリスクと注意点をわかりやすく解説します。
1. 社会的信用が低くなる
フリーランスになると、金融機関や社会からの信用が会社員のときよりも低く見られる傾向があります。
- 賃貸住宅の審査が通りにくい
- クレジットカードが作りにくい
- ローンの審査が通りにくい
特に独立直後は、確定申告の実績が1年分しかないため、さらに信用が得づらくなります。
事前にできる対策としては、以下のようなものがあります。
- クレジットカードを会社員のうちに作っておく
- 賃貸やローンなどの契約を済ませておく
- 所得証明や請求書の控えをPDFで保存・管理しておく
2. 休日と稼働日の調整をしないといけない
フリーランスエンジニアの多くが「月◯時間稼働」といった契約で働いています。そのため、祝日が多い月は稼働日数が減り、契約時間を満たすために平日に残業が必要になることもあります。
例えば月140時間~180時間の契約の場合、1日8時間働く場合最低でも18日稼働する必要があります。
また、長期休暇を取る際には、クライアントの業務スケジュールに合わせる必要があります。自由に休みを取れるように見えても、実際は事前の相談や調整が必要になることが多いため注意が必要です。
3. 税金・保険をすべて自分で管理する必要がある
会社員であれば、税金や社会保険は給料から自動で天引きされ、年末調整も会社が代行してくれます。しかし、フリーランスになると、これらをすべて自分で管理し、納付する必要があります。
特に重要なのが、毎年1回の確定申告です。収入や経費を集計して税金を計算し、自分で税務署に提出しなければなりません。
受け取ったお金をそのまま使ってしまうと、後からの納税ができなくなるリスクもあります。帳簿管理と資金の分別は、早い段階から意識しておきましょう。
主な支払い対象は以下のとおりです。
- 所得税(確定申告で算出して納付)
- 消費税(売上が1,000万円以上で課税)
- 国民健康保険・国民年金(自治体からの請求に応じて納付)
- 住民税(前年の所得に応じて課税)
青色申告を選択すれば最大65万円の控除が受けられるため、開業届の提出と帳簿の準備は早めに済ませておくのがおすすめです。
会計ソフト(freeeやマネーフォワード)を使えば、日々の記帳から確定申告までスムーズに対応できます。不安な方は税理士とスポット契約するのも一つの方法です。
4. 収入が不安定である
フリーランスは成果がすべて。契約が打ち切られると、翌月から収入がゼロになる可能性もあります。
想定されるリスクとしては以下のようなものがあります。
- クライアントの都合で契約が突然終了する
- 案件と案件の間に空白期間ができる
- 入院や怪我などで働けない期間は収入が途絶える
- インボイス制度など、法制度の変更に影響されやすい
こうしたリスクに備えるために、以下のような対策が効果的です。
- 生活費の3〜6ヶ月分は常に確保しておく
- 複数の案件や副業で収入源を分散させる
- エージェントとは早めに連絡を取り、案件終了の予兆をつかむ
- 契約更新のタイミングより前に、次の案件を探し始める習慣をつける
また、契約終了の予定について、企業側から自発的に伝えてくれるとは限りません。契約の継続可否や終了時期については、自分から確認する姿勢が大切です。日ごろから担当者とこまめにコミュニケーションを取ることが、安定した稼働につながります。
5. スキルアップがしづらい
フリーランスになると、学習の時間も機会も自分で確保しない限り、なかなか得られません。意識しなければ、あっという間に技術が止まり、数年前のスキルのままになってしまうこともあります。
よくある課題としては以下のようなものがあります。
- 案件に追われて、学習の時間が取れない
- 既存システムの改修や保守など、技術的に挑戦の少ない仕事が多い
- 周囲に教えてくれる人や相談相手がいないため、成長機会が限られる
こうした状況でも、成長を続けていくためには以下のような工夫が有効です。
- 自分で時間をつくり、参考書や動画学習・資格取得に取り組む
- 顧客と信頼関係を築き、新しい技術や工程も任せてもらえるようにする
- 技術ブログやSNSなどで発信しながら、自分のアウトプットの場を作る
フリーランスという働き方は、自分の意思で学び、動かないと技術的に取り残されやすい環境でもあります。意識的に学習習慣を持ち続けることが、将来の単価や案件選びの幅を広げることにつながります。
おわりに
フリーランスエンジニアという働き方は、自由でやりがいがあります。その一方で、すべての責任を自分で背負う覚悟も必要です。
リスクを知らずに勢いで独立すると、思わぬ落とし穴にはまることもあります。だからこそ、事前にできる準備をしっかり行い、不安要素を一つずつ減らしておくことが重要です。
まずは副業や短期案件から始めて、自分の適性を確かめながら独立を目指すのも良い選択です。自分らしい働き方を実現するための一歩として、この記事が少しでも参考になれば幸いです。