システムエンジニア1年目で知っておきたい「ドキュメント」の基本

はじめに:なぜドキュメントがそんなに大切なの?

この記事では、システムエンジニアとして現場で関わるさまざまなドキュメントの種類や役割、読み方・活かし方を解説していきます。

システムエンジニアになりたての頃は、「コードを書くこと」に意識が向きがちですが、実際の現場では、さまざまなドキュメント(資料)がプロジェクトを支える土台となっています。

たとえば、「この機能って何のためにあるんだろう?」「この画面、どうやって動くんだっけ?」と悩む場面に出くわすこともありますよね。そんなとき、信頼できるドキュメントが手元にあると、迷わず確認できて安心です。

ドキュメントは“プロジェクトの記憶”であり、“チーム間の共通言語”でもあります。だからこそ、1年目のうちから慣れておくことで、のちのちの仕事がグッとやりやすくなります。

この記事で学べること

• 現場でよく使われるドキュメントの種類と目的

• 各フェーズ(要件定義、設計、テスト、保守、コミュニケーション)で登場する代表的なドキュメントの具体例

• ドキュメントの読み方や活用のコツ

• 自分でドキュメントを作れるようになるための第一歩

システムエンジニアになりたての頃は、「コードを書くこと」に意識が向きがちですが、実際の現場では、さまざまなドキュメント(資料)がプロジェクトを支える土台となっています。

たとえば、「この機能って何のためにあるんだろう?」「この画面、どうやって動くんだっけ?」と悩む場面に出くわすこともありますよね。そんなとき、信頼できるドキュメントが手元にあると、迷わず確認できて安心です。

ドキュメントは“プロジェクトの記憶”であり、“チーム間の共通言語”でもあります。だからこそ、1年目のうちから慣れておくことで、のちのちの仕事がグッとやりやすくなります。

1. 要件定義・仕様に関するドキュメント

業務フロー図(業務プロセス図)

システムが扱う業務の流れを図でまとめたドキュメントです。

たとえば「商品を購入する」という業務なら、「商品を選ぶ」「カートに入れる」「注文する」「決済する」といった流れが一目で分かります。

業務全体のイメージがつかみやすく、会話の行き違いを減らす効果があります。まず最初に読んでみるのにおすすめです。

機能一覧

システムが提供する機能をリストアップしたドキュメントです。たとえば、

• ユーザー登録

• ログイン

• パスワード再設定

• 商品検索

など、そのシステムで「何ができるか」が一覧で並んでいます。自分が開発する範囲を把握するのに役立ちます。

非機能要件一覧

「見えないけれど重要な性能・品質」の条件をまとめたドキュメントです。

たとえば、

• 3秒以内にレスポンスを返す

• 1日10万アクセスに耐えられる

• データは暗号化して保存する

など、セキュリティ・スピード・拡張性といった観点が記載されています。トラブルの原因にもなりやすいため、注意して確認しておきたい項目です。

要件定義書・仕様書

• 要件定義書:お客さまが「こういうことを実現したい」とまとめたドキュメント

• 仕様書:それを「どう作るか」を技術的な観点で整理したドキュメント

どちらもプロジェクトの前提となる重要ドキュメントです。特に自分の担当する機能がどこに書かれているかを意識しながら読むと、目的がより明確になります。

WBS(Work Breakdown Structure)

プロジェクト全体の作業を細かく分解し、一覧にまとめた構造図です。

• 各タスクの開始日・終了日

• 担当者と工数の見積もり

• 作業の依存関係

などを整理することで、進捗管理やスケジュールの可視化が可能になります。WBSは、プロジェクトマネジメントの基本となるドキュメントです。

2. 設計・開発フェーズで使うドキュメント

基本設計書(外部設計書)

ユーザーの目に触れる部分(画面や操作の流れなど)を設計したドキュメントです。たとえば、

• ログイン画面に何の入力項目があるか

• エラーメッセージの表示位置や文言

• ボタンを押したときの遷移先

といった情報が記載されています。UIの動きや見た目に関わる内容が中心です。

詳細設計書(内部設計書)

コードを書くための具体的な設計情報をまとめたドキュメントです。

• クラスの設計

• メソッドの設計

• 処理フローやエラー対応

などが細かく記載されており、実装フェーズでの指針になります。

クラス図

オブジェクト指向のシステムで、クラス間の関係を図で表したドキュメントです。

• 継承関係

• 使用関係

• 属性とメソッド

といった構造がわかるようになっています。大きなシステムの全体像をつかむ手がかりになります。

シーケンス図

処理の流れやオブジェクト同士のやり取りを時系列で表したドキュメントです。

たとえばログイン処理の流れが、

「入力 → 認証API呼び出し → DB照会 → 成否判定」

といった形で矢印で整理されているので、動作の流れが理解しやすくなります。

ER図(エンティティ関係図)

データベースにおけるテーブル構造と、テーブル同士の関係を図にしたドキュメントです。

• どんなテーブルがあるのか

• 主キー/外部キーの関係

• 各テーブルの役割

が視覚的に理解できます。SQLを書くときやデータのつながりを確認する際に役立ちます。

データベース設計書

ER図をもとに、より細かい内容(カラム名・データ型・制約条件など)を整理したドキュメントです。正確な設計に基づいたテーブル作成やマイグレーションに必要です。

外部インターフェース設計書

他システムや外部サービスとやり取りするAPIやデータ連携の仕様をまとめたドキュメントです。

• APIのURL(エンドポイント)

• リクエスト・レスポンスのデータ形式

• エラー時の扱い

などが記載されています。連携トラブルを防ぐうえでも非常に重要なドキュメントです。

コーディング規約

開発チーム全体で統一したコードを書くためのルールをまとめたドキュメントです。

• インデントのルール

• 命名規則(クラス名、変数名など)

• コメントの書き方

などが定められており、コードの可読性や保守性を高めるために欠かせません。

環境構築手順書

開発環境を自分のパソコンに再現するための手順をまとめたドキュメントです。

• 必要なツールのインストール手順

• 初期設定(DB、サーバーなど)

• 起動までの流れ

新しいメンバーがスムーズに開発に入るためにも、環境構築ドキュメントは非常に重要です。

3. テストフェーズで使うドキュメント

テスト仕様書・テストケース

「この機能が想定通りに動いているか?」を確認するためのチェックリストです。

• テスト項目:何をテストするか

• テスト手順:どういう操作をするか

• 期待結果:どんな表示や動作になれば成功か

といった内容が記載されており、品質を担保するための重要な資料です。テスト担当になったときには、このドキュメントに沿って作業を進めることが多くなります。テスト結果を記録する「エビデンス」としての役割もあるため、丁寧な記述が求められます。

テスト仕様書・テストケース

「この機能が想定通りに動いているか?」を確認するためのチェックリストです。

• テスト項目:何をテストするか

• テスト手順:どういう操作をするか

• 期待結果:どんな表示や動作になれば成功か

をひとつひとつ記載します。1年目はテスト担当になることも多いため、よく使うドキュメントのひとつです。

5. 保守フェーズで使うドキュメント

運用手順書

システムが安定して運用されるよう、日々の操作や障害時の対応をまとめたドキュメントです。

• バッチ処理の手順

• 障害発生時の初動対応

• 定期点検の実施方法

といった、運用ルールが記載されていて、保守担当者には欠かせないドキュメントです。

といった、運用ルールが記載されていて、保守担当者には欠かせないドキュメントです。

障害報告書・変更履歴書

• 障害報告書:トラブルが発生した際、その内容・原因・対応策を記録するドキュメントです。再発防止のための重要な材料になります。

• 変更履歴書:設計やコードをいつ・誰が・なぜ変更したかを記録するドキュメントです。履歴をたどることで、過去の経緯を明確にできます。

どちらもあとから振り返るときの“証拠”や“教訓”にもなり、チーム全体の知識の蓄積にもつながります。

4. コミュニケーションフェーズで使うドキュメント

5. コミュニケーションフェーズで使うドキュメント

議事録

打ち合わせや会議の内容、決まったこと、次回までの課題などを記録したドキュメントです。

• 日時、参加者、目的

• 話し合った内容と結論

• 次回のToDoやアクションアイテム

あとから「言った・言わない」にならないよう、プロジェクトを円滑に進めるための土台になります。

ドキュメントを読むときに意識したいこと

ドキュメントは最初からすべてを理解しようとすると、混乱することもあります。以下のポイントを意識することで、よりスムーズに読み進められるようになります。

• このドキュメントは「何のため」にあるのかを最初に確認する

• 図や見出しから眺めてみるだけでもOK

• わからない言葉をそのままにせず、少しずつ調べていく

• 全部を読まなくても大丈夫。必要なときに戻ればOK

読み方のコツがわかると、ドキュメントは“読むもの”から“使えるもの”へと変わっていきます。

ドキュメントを書く力を身につけよう

書く力は、読む力と同じくらい、あるいはそれ以上に現場で重視されます。というのも、良いドキュメントは「見返したときにわかる」「他の人が読んでも迷わない」ことが大前提になるからです。

たとえば設計書を作るとき、単に仕様を書くのではなく、「なぜこの設計にしたのか」「代替案はあったか」といった背景も添えて書けると、ぐっと伝わるドキュメントになります。

新人のうちは、メモや資料を自分のためにまとめるだけでも十分な練習になります。書くことに慣れてくると、チーム内での共有やレビューもスムーズに進むようになります。

ドキュメントは読むだけでなく、少しずつ“自分で作ってみる”経験をすることで、理解が一段と深まります。最初は身近なところから始めてみましょう。

• 作業メモを簡単に残しておく → 運用手順書のベースに

• テスト時の操作と結果をまとめる → テストケースの元に

• 他の人に説明した内容を図にする → シーケンス図やフロー図の練習に

「伝える」意識を持ってドキュメントを作ることは、成長の大きなきっかけになります。

まとめ:ドキュメントは1年目エンジニアの味方になる

ドキュメントは、ただの書類ではありません。プロジェクトの言語であり、あなたの理解を支えてくれるパートナーのような存在です。

まずは「どのドキュメントに何を書くのか」を知ること。そして、少しずつでも「自分でドキュメントを作れるようになること」。

その積み重ねが、チームに信頼される仕事ができるエンジニアへの第一歩になります。

少しずつ慣れて、自分なりの「ドキュメントとの向き合い方」を見つけていきましょう。

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