「あの人、優秀だったのに離れちゃうの・・・？」
「現場のフリーランスエンジニアが急に現場を離れることになった」「期待以上の成果を出してくれていたのに、突然の契約終了」 「慣れてくれたからこちらとしては続けてほしかったのに…」
現場の管理を任されている方は特にそんな経験ありませんでしたか？
フリーランスエンジニアは、自由な働き方を選び、目的を持って案件に参画しています。彼らにとって案件は選ぶもの。ほんの少しの違和感が、静かな離脱の引き金になることもあります。
この記事では、私の実体験や周囲の事例を交えながら、「なぜフリーランスが現場から離れるのか？」「どうすれば継続して関わってもらえるのか？」を、現場視点で具体的に解説します。
誰かを責めるのではなく、これからの関係をより良くするために。そんなあたたかい視点で、お届けします。
フリーランスエンジニアはどんな人がなるのか
フリーランスエンジニアという選択には、それぞれに背景があります。大きな決断の裏には、「こんなふうに働きたい」という強い想いがあることを、まず知っておいてください。
スキルアップを目指す人
「もっと成長したい」「新しい技術に触れたい」と、前向きな気持ちでフリーランスになる方も多くいます。自分の力を試しながら、技術力を高めていける環境を求めているのです。
とくに、エンジニアとしてのキャリアに課題意識を持っている方ほど、日々の学びや挑戦が実感できる現場を大切にしています。そうした環境がなければ、「ここにいる意味」を見出せなくなってしまうこともあるのです。
「現場で新しい技術に触れられるか」「裁量を持てるか」といった点は、報酬以上に彼らの心を動かす要素になり得ます。
自由な働き方を求める人
家族との時間、暮らしのスタイル、体調の都合。どんな理由であれ、柔軟な働き方を求めて独立する方は増えています。「働きながら、自分らしくありたい」。それが彼らの願いです。
自由な働き方は、単に物理的な制約からの解放だけでなく、精神的な安定や生産性にも直結します。スケジュールの融通や、働く場所の選択肢があるだけで、フリーランスにとってその現場は「心地よい場所」になりやすいのです。
「リモートOKかどうか」「コアタイムはあるか」などの細かな条件も、実は大きな判断材料。制約が少ないほど、彼らはその現場に安心して根を下ろすことができるのです。
収入を増やしたい人
努力や成果を、もっと正当に評価してほしい──そんな気持ちから独立する方もいます。「頑張った分、収入に反映される働き方」を選んでいるのです。
組織では評価されにくい貢献が、フリーランスという立場でなら可視化され、対価として得られる。そういった希望を持って、覚悟をもって独立に踏み切っている方も少なくありません。
「単価が上がる余地はあるのか」「スキルに見合った報酬が得られるのか」は、継続を決めるうえでも非常に重要なポイントです。
フリーランスの案件選びの基準
どういう想いで会社を辞めて独立したのか。それによって、どんな案件を選ぶのかは大きく変わります。ここでは、フリーランスが「長く関わりたい」と思える条件を、いくつかご紹介します。
単価・報酬
報酬は生活の基盤であると同時に、「自分が認められているか」の指標にもなります。お金の話は直接的すぎるようでいて、じつは信頼や感謝を示す大事な手段でもあるのです。
報酬の提示は「あなたの価値をどう見ているか」を表現する言語のひとつ。とくに成果主義を前提に働いているフリーランスにとっては、なおさらシビアに受け止められる部分です。
例えば私の場合、1年で1万円でも単価が上がると「ちゃんと見てくれている」と感じます。それだけで次の1年も頑張ろうと思えますね。
スキルアップの機会
同じ作業を繰り返すのではなく、新しい挑戦や裁量を求める人は多いです。「自分の成長を支えてくれる場所か」は、継続意欲を左右する大きな要素です。
技術職にとってのやりがいは、“できること”をただ繰り返すのではなく、“できないこと”に向き合い、少しずつ手にしていく過程にあります。その機会が用意されているかどうかは、選ばれる理由にも、離れられる理由にもなります。
例えば、新しい作業ではなくても、知らないツールを使うだけでワクワクします。逆に、同じような画面を作り続けるようなずっと同じ作業だと、モチベーションの低下につながります。
働きやすさ
物理的な環境だけでなく、心理的な安心感も含めて「働きやすさ」は重要です。たとえば雑談が許される空気や、「ありがとう」が飛び交う文化。それだけで、働く場の温度が変わってきます。
信頼を前提としたやりとり、気軽な相談、適度なフィードバック。こうした要素が揃うことで、フリーランスでも「このチームの一員なんだ」と実感できます。
私の友人のフリーランスエンジニアは、新しく案件に入ったタイミングで、毎月1on1のある現場だったのがよかったらしく「今までで一番良い現場」と話していました。
フリーランスが離れる理由
条件のギャップ（前提と現実のズレ）
参画前に聞いていた条件や期待と、実際の業務内容や進め方にズレがあると、フリーランスは「話が違う」と感じてしまいます。たとえば「リモートOKと聞いていたのに、頻繁に出社を求められる」など、細かなギャップの積み重ねが不信感を生むこともあります。
契約前の情報開示が不十分だったり、「まず入ってみてから考えよう」という空気があると、結果的に早期離脱を招いてしまうことも。誤解やズレがあっても、相談できる環境があれば続くこともあるのです。
事前に伝えるべきことを丁寧にすり合わせる。逆に、変わる可能性があることは「まだ未確定」と伝える。小さな誠実さが、大きな信頼につながります。
コミュニケーション不足
フリーランスは基本的に外部の人間として扱われることが多く、ちょっとした言葉の温度差や報連相の遅れが、大きな距離を感じさせてしまうことがあります。直接相談できる相手がいないまま、モヤモヤが積み重なり、静かに離れていくケースも。
形式ばった報告だけでなく、気軽に話せる雑談や1on1のような場を設けることが、孤立感の解消につながります。「ここではちゃんと話を聞いてもらえる」と思えるだけで、フリーランスは安心して仕事に向き合えるのです。
モチベーションの低下
フリーランスにとって、モチベーションの維持はとても大きなテーマです。彼らは「自分で選んだ案件」であっても、日々の仕事が単調に感じたり、成長を感じられなくなったりすると、自然と気持ちが離れていきます。
特に、タスクの内容が作業的になりすぎると「自分でなくてもいいのでは？」という疑問が生まれてしまいます。そうした中で、小さな期待や「頼りにしているよ」という声があるだけで、驚くほど気持ちが変わることもあります。
私自身、知らないツールに触れられる環境にいるだけで「よし、もう少し頑張ってみようかな」と思えることがありました。モチベーションって、ほんの少しの刺激と信頼で回復するものだと考えています。
信頼関係の欠如
フリーランスも一緒に働く仲間です。仕事の進め方や相談のしやすさなど、目には見えない「信頼の土台」があるかどうかで、その人の関わり方は大きく変わってきます。
特に、フィードバックの内容やトーンは大きな影響を与えます。成果に対してしっかり向き合ってくれる人がいるだけで、「この現場で続けたい」と思えるのです。
会社員の場合は社員全員と話すきっかけがありますが、フリーランスの場合はそうはいきません。
知人の１人は「任せてもらえている」と感じられるだけで、多少の忙しさは気にならないと話していました。「一緒に頑張ってくれている」という感覚があるかどうかが大切ですね。
スキルアップできない現場
現状維持を求める現場では、フリーランスの成長意欲とミスマッチが起こりやすいです。「なにかを学びたい」「ステップアップしたい」という思いが尊重されないと、フリーランスは早々に離脱を検討するようになります。
業務に必要な範囲だけでなく、「余白のあるタスク」や「チャレンジできる機会」が用意されているか。それが継続の鍵になります。
社員の性格の相性
意外に思われるかもしれませんが、人間関係の些細な摩擦が、離脱のきっかけになることもあります。社員同士の空気感や、言葉のトーン、ちょっとした一言。フリーランスにとっては「その職場の空気」がすべてです。
特に、上下関係や部署間の対立が露骨な現場では、その緊張感に疲れてしまうことも。穏やかに仕事ができるかどうかは、数字では測れない大切な要素です。
私は以前の現場で、部長と課長の不仲に巻き込まれ、気を使い続けて本当にしんどかったです。技術よりも人間関係のほうがきつい…それを実感しました。
フリーランスが長く参画するための工夫
条件を事前に明示する
「最初に伝えた内容」と「実際の内容」にズレがあると、どんなに誠実な現場でも信頼を損なってしまいます。逆に、細かい部分まで丁寧に伝えるだけで、安心してもらえることもあるのです。
とくに「忙しいかどうか」「裁量の範囲」「リモートの実態」など、言いにくいことほど最初に共有しておくことで、「あとから知った」失望を防げます。
定期的な1on1
業務だけでなく、気持ちの部分を話せる場があること。これはフリーランスにとって「自分をちゃんと見てもらえている」と感じる瞬間です。
週1でも月1でも構いません。少し立ち止まって話せる時間があるだけで、信頼感はぐっと深まります。何を話すかより、「話せる関係」であることが大切です。
スキルアップの機会提供
業務の中に「成長の種」を仕込むことで、フリーランスは「ここで働く意味」を実感できます。すべてのタスクがチャレンジングである必要はありません。ときどき任せてもらえる“ひと工夫”が、大きなモチベーションになります。
新しいツールの導入検討、ドキュメントの整理、設計レビューへの参加など。主体性を活かせる場を用意するだけで、仕事が作業から“価値のある体験”に変わるのです。
信頼して任せる姿勢
指示通りに動いてくれるだけの関係では、フリーランスの力は十分に活かされません。「どう思う？」「任せてみてもいい？」といった信頼の投げかけが、彼らのやる気を引き出します。
信頼されていると感じられれば、「自分がここにいる意味」が見えてきます。任せすぎず、干渉しすぎず。ちょうどよい距離感を意識することが、長期的な関係づくりには不可欠です。
まとめ｜人との関係に、正解はないけれど
フリーランスが突然離れてしまう理由には、ひとつの正解があるわけではありません。
ただ、そこには必ず「気持ちの揺れ」があって、その裏側には人としての不安や戸惑いがあるということ。それを理解して関わろうとすることが、いちばん大切なのではないでしょうか。
報酬や条件も大事です。でも、それ以上に「ちゃんと見てもらえている」「仲間として扱ってもらえている」と感じられることが、長く働きたいと思える理由になります。
小さな対話や気づかいが、大きな信頼につながる。 フリーランスという立場だからこそ、より丁寧に、人と人として向き合うことが、これからの働き方には必要だと感じます。
感謝と敬意を忘れずに、よい関係を築いていきましょう。
