はじめに
フリーランスになると、自分の裁量で働ける自由な生活が手に入ります。
でもその反面、保険や税金、業務経費など、お金に関するあらゆる支出を自分で管理する必要が出てきます。
知らなかったとしても払えないと大変なことになります。
この記事では、フリーランスが1年間で発生する主な支出を、時期別の一覧とともにわかりやすく解説していきます。
今回はわかりやすいように月の単価が60万円の年収720万円の売上のフリーランスエンジニアを目安に進めていきます。
年間スケジュールで見るフリーランスの主な支出
月 | 支払い内容 | 金額の目安(年720万円の場合) | 支払い方法 |
---|---|---|---|
毎月 | 国民健康保険、国民年金、業務経費 | 約6〜7万円 | 区役所の納付書、口座振替、クレカなど |
3月 | 所得税・住民税(確定申告とあわせて納税) | 約70万円(合わせて) | e-Taxまたは税務署で納付書払い |
6月 | 所得税の予定納税(第1回) | 約15万円 | 納付書またはe-Tax |
8月 | 個人事業税(第1回) | 約14万円 | 都道府県から届く納付書 |
11月 | 所得税の予定納税(第2回)+個人事業税(第2回) | 約29万円(合計) | 同上 |
翌年3月 | 消費税(売上1,000万円未満なので対象外) | ― | ― |
国民健康保険:収入に応じて上がる医療の基本コスト
月60万円・年収720万円の方が加入する国民健康保険は、年間でおよそ25万〜30万円程度になることが多いです。
自治体によって計算方法は異なりますが、「収入が増えると保険料も上がる」という点は共通しています。
私も1年目は「なんだ、安いじゃん」と思っていたのですが、2年目で前年の収入が反映された途端、保険料が一気に2倍近くになって焦りました…。これはあとから来る支出の代表格なので、油断禁物です。
納付書は市区町村から届くので、コンビニや銀行で支払うか、手続きすれば口座引き落としも可能です。
国民年金:将来の安心をつくる毎月の投資
国民年金は全国一律で、月額およそ16,000円(年約19万円)の支払いが必要です。
特に1年目は「払う余裕がない…」と思いがちですが、将来の受け取り額を考えると、無理のない範囲で払っておくのが安心です。
もし本当に支払いが厳しい場合は、免除や猶予の申請もできるので、迷ったら役所に相談してみてください。多くの人が利用しています。
所得税と住民税:3月にまとめてやってくる税金の山場
ここがフリーランス最大の「支出イベント」です。
年収720万円の例だと、経費を年間144万円(20%)、所得控除を約100万円とすると、課税所得は約476万円。
そこから計算される税金は、
- 所得税:約30〜35万円
- 住民税:約40万円
となり、合わせておよそ70万円前後の支払いになります(3月中旬に納付)。
毎月貯金せずに3月を迎えると、かなり苦しいです。
「毎月5〜6万円ずつ積み立てる」くらいの感覚で、税金に備えておきましょう。
所得税の予定納税(6月・11月):前もって払う“税の先取り”
前年にしっかり稼いでいると、翌年は6月と11月に「予定納税」の通知が届きます。
これは、今年も同じくらい稼ぐだろうという前提で、今年分の税金を前払いしておく制度です。
- 6月:約15万円
- 11月:約15万円
これはあくまで「前払い」なので、翌年の確定申告で最終精算されます。
ですが、「急に30万円の支払いが発生した」と焦る人が多いので、こちらも事前の積立がカギです。
個人事業税(8月・11月):エンジニアも対象
個人事業税は、「ある程度稼げるようになると発生する税金」。
エンジニアは課税対象業種なので、所得が290万円を超えると課税されます。
年収720万円の例では、所得は約576万円なので対象になります。
税率は5%。つまり、年間で約28万円ほどの税金を払うことになります。
これも8月・11月に2分割で支払います。
業務経費:見落としがちな「日々のコスト」
こちらは仕事に必要な支出で、仕事に必要なものにも当然ながらお金がかかります。
月に2〜3万円ほどのペースで、
- ソフトやクラウドツール(Copilot、Notion、Adobeなど)
- サーバー、ドメイン、ネット回線
- ガジェット購入、PC備品のリース料
- 書籍、セミナー、勉強代
などを使っていくと、年間で約30〜40万円にはなります。
これらは確定申告で経費として処理可能ですが、支払いは基本的にクレカや口座引き落とし。
つまり、「現金は出ていく」ので、キャッシュフローには気をつけたいところです。
支出と手取りのざっくりイメージ
項目 | 年間金額(目安) |
---|---|
売上(総収入) | 720万円 |
経費(20%想定) | 144万円 |
健康保険 | 約30万円 |
国民年金 | 約19万円 |
所得税+住民税 | 約70万円 |
個人事業税 | 約28万円 |
業務経費 | 約30万円 |
合計支出 | 約321万円 |
手残り(概算) | 約399万円 |
月換算にすると、実質手取りは月33万円程度。
思ったよりも「自由に使えるお金」が少ないと感じたかもしれませんね。
だからこそ、事前に支出の流れを知っておくことが何より大事なのです。
まとめ:収入だけでなく「支出の設計」もフリーランスの実力
フリーランスは収入のコントロールが自由なぶん、支出も自分でしっかり管理しなければいけません。
どんなに稼いでも、税金や保険、経費を見落としていたら、あとから一気にお金が出ていくという現実があります。
「月60万円も稼げれば大丈夫」と思っていた人ほど、3月・6月・8月・11月の壁に直面して苦しむこともあります。
だからこそ、最初の1年目から
- 売上の2〜3割を「税金・保険用」として積立
- 支払いのスケジュールを把握しておく
- 経費を記録しておく習慣をつける
この3つを意識するだけで、将来の不安をぐっと減らせます。