はじめに
「IT業界に入るならSESが入りやすい」と、
未経験からエンジニアを目指す人の多くが最初に選択肢にあがるのがSIer企業であり、SES(システムエンジニアリングサービス)をビジネスとしている企業です。
しかしその裏には、最初に当たる現場でこれからの将来が決まってしまい、もしかしたら「何も得られない時間」になってしまう「配属ガチャ」という闇が待っています。
この記事ではSESの配属ガチャについて、実態や問題点、そして巻き込まれてしまった場合の対応をわかりやすく解説します。
配属ガチャとは?なぜ「ガチャ」なのか
SES企業における配属の仕組み
SES企業に雇用されたエンジニアは、本社ではなく客先の現場に常駐されて仕事をする「客先常駐」が基本です。
これは自分の会社で売っているものがなく、他社のシステム開発に人を派遣することで売り上げを得るビジネスだからです。
人を客先に送れば送るほど利益になるのでどれだけ途切れずに社員を派遣できるかというビジネスモデルになります。
配属先は会社側の営業が仕事を取ってきて、そこに依存して決まる場合が大半です。このため、本人の希望や技術を元に配属が決まるわけではありません。
なぜ「ガチャ」と呼ばれるのか
この場合、どれだけ途切れずに案件に派遣するかが鍵になってきますので、その時にあった案件にとりあえず入れられます。
本人が希望していた案件が新しく出たときに変更できればいいのですが、現場の都合上そんな簡単なことではありません。
しかも、本人ができる人であればあるほどその現場にいてほしいといわれ、本来やりたかった案件に入ることができなくなります。
そのため、希望の技術、開発フェーズ、職場環境…これらが「当たる」こともあれば「全然違う」こともあります。
その違いは、本人の意志や努力とは関係なく「タイミング」で決まり、この不確定さが「ガチャ」と語られる所以を生んでいます。
希望していない案件の例とそのリスク
単調作業やテスター中心
「プログラミングをしたくてIT業界に入ったのに、数ヶ月間ずっとExcel作業」という例も少なくありません。
テストケースは大事な仕事ですが、これだけでは開発技術が身につきません。
一時的にそのフェーズならいいのですが、ずっとその作業だけやることになる場合があります。
開発経験が欠けることの危険性
エンジニアとしての資料は「何を作ったか」です。開発経験がないと次の潜在候補にも立ち込めず、後の転職で大きなハンディキャップになります。
そのまま年次があがればあがるほど「〇年目なのに開発できないの?」と敬遠され、新しい案件をやるのが難しくなります。
後輩が増えたり、事務作業が多くなってきたらさらに抜け辛くなります。
人間関係や職場環境の悪化
現場のメンバーが全て外部人員で、互いに関係を持たない案件もあります。質問しづらかったり、疎外感を感じてしまうケースもあります。
外部で働いていることで社内のイベントに参加しにくくなり、自分だけ情報が入ってこなかったりすると「なんでこの会社にいるんだろう」と思い転職を思い立つ人もいるでしょう。
なぜ配属ガチャが起こるのか?
SESのビジネスモデル
未経験エンジニアの転職先として多いのが「SES(システムエンジニアリングサービス)」企業です。
SESは自社ではなく顧客先に常駐して開発や運用を行う働き方で、配属先はその都度変わるのが前提のモデルです。
SESは「人を時間で貸す」程度のモデルです。それは言い換えれば、現場に入らないと収益が発生しないということ。それゆえ、「どこでもいいから現場に入れたい」という営業側の発想につながります。
SES企業では「顧客の案件にマッチすれば即配属」という流れになるため、エンジニアの希望や適性よりも営業都合が優先されることが珍しくありません。
営業主張の配属決定
特にSESや受託開発の企業では、エンジニアの配属先は営業部門が決定権を握っていることがよくあります。
営業担当は「この人をこの現場に入れられるか」を重視して動いており、その結果、エンジニア本人の意思が軽視されることもあります。
現場に入る直前まで詳細が知らされない「案件ガチャ」もあり、入社前に聞いていた内容と全く違う仕事を任される可能性もあります。
これは給料を生むためにも必要な統治ですが、本人の希望や技術的適性が忘れられがちなのも現実です。
配属ガチャの企業に入ってしまったときの対応策
まずは社内に相談する
配属された部署が希望と違っても、いきなり辞める前にまずは社内の相談窓口や上司に現状を共有してみましょう。
「やりたいことがある」「この部署では将来的なキャリアが描けない」など、建設的かつ冷静な伝え方を意識するのがポイントです。
企業によっては配属後に面談の場が設けられるケースもあり、タイミングを見て異動希望を伝えればチャンスが巡ってくる可能性もあります。
スキルアップの時間と割り切る
たとえ希望外の配属であっても、「スキルアップ期間」として割り切って過ごすのもひとつの選択肢です。
特に未経験からのスタートであれば、現場で得られる経験は貴重な財産になります。
たとえば運用保守に配属された場合でも、
- 既存システムの構造を知る
- インシデント対応力を鍛える
- 顧客折衝やドキュメント力が磨かれる
など、開発経験とは別軸のスキルが身につくチャンスです。
転職も選択肢の一つ
どうしても今の配属が合わない、キャリアを損ねそう、相談しても改善の見込みがない…。
そんなときは転職を視野に入れるのも戦略的な判断です。
特にIT業界では、第二新卒や未経験者でも歓迎される企業が多く存在します。
早期退職に不安を感じるかもしれませんが、目的が明確で行動に一貫性があればマイナスにはなりません。
まとめ:ビジネスモデルを理解し、主体的にキャリアを選ぼう
SES企業は未経験からエンジニアに挑戦する手段として有効です。しかしその一方で「配属ガチャ」という現実があり、何も知らずに飛び込むと大きな後悔につながります。
SES企業のビジネスモデルを知っておけばなぜ「配属ガチャ」が起きてしまうのかがわかるので、企業選びに役立てましょう。
そして配属ガチャが起きてしまった場合、一番大切なのは「自分のキャリアの軸を見失わないこと」です。
誰かに決められる人生ではなく、選択し続ける意思が、最終的に理想のキャリアにつながります。
ただし誤解してはいけないのは、「SES=悪」ではないということ。
キャリア支援に力を入れているSES企業や、希望を最大限考慮してくれる会社も存在します。
大切なのは、企業ごとの方針や配属プロセスを事前に見極めることです。